「嫌われたくない」という思いから、自分の言動を必要以上におさえて他人に気をつかい、苦しくなっている人がとても多いと感じます。
しかし、そもそも「頑張れば嫌われない」という発想がストレスを生んでいるということをどれだけの方が自覚しているでしょうか。
ストレス・マネジメントにおいての大原則は、コントロールできることとできないことを区別し、コントロールできることに注力するということです。
そして、コントロールできないことの代表は、他人と事実(過去)。この2つはどんなに頑張ってもコントロールできません。
多くのお悩みは、コントロールできないものをコントロールしようとしていることにあります。
たとえば、Aさんが何をどう思うかは、完全にAさんの自由です。
Aさんによく思ってもらうために機嫌をとることはできますが、それをAさんがどう思うかはAさんが決めること。「いろいろ気をつかってくれていい人だ」と気に入ってもらえるかもしれないし、「あんなご機嫌とりは信用できない」と嫌われるかもしれません。
あなたにも、少なからず人の好き嫌いはありませんか。
ときどき、「自分から嫌わなければ嫌われることもないのではないか」という不思議な理由で、「私は嫌いな人はいません」「嫌いになるなんて考えたこともありません」という人がいますが、それでも、「じゃあ、イヤな人はいませんか」とお聞きすると、例外なく「います」と答えます。
でも、イヤ=嫌、つまり、「嫌い」という言葉を避けているだけで、イヤな人=嫌いな人なんです。
好き嫌いは本能的・生理的な感覚で、とても自然なこと。食べ物や音楽、色、場所など、誰にでも好き嫌いはあるもの。それと同じで、人を嫌いになるのは決して悪いことではありません。
「人を嫌いになってもいい」
まず、あらゆることに対して自分が好き嫌いの感情をもっていいと認めましょう。それができたら、同じことを他人にも認めてあげましょう。
誰でも、あらゆることに好き嫌いの感情をもっていい。
ただし、大人は、それをバカ正直に表現してはいけません。
好き嫌いをそのままストレートに表現するのは子どもがすること。成熟した大人は、状況に応じてアウトプットを調整します。それがマナー、大人の社交術です。
たとえば、仕事の場では、嫌いな人とでも礼を欠かさず淡々と仕事をすべきです。今や、個人的な好き嫌いを職場にもちこむのはハラスメントとして処罰されるほど不適切な行為とされています。
だから、もし今いじめ・嫌がらせなどの被害に遭っている人がいれば、直ちに上司やその上司、あるいは人事など、職場内の信用できる人に相談してください。ひとりで抱えてがまんすることではありません。
また、プライベートでは、嫌いな人と無理につきあう必要はありません。
学校時代は他に逃げ場が少なかったため、がまんしてつきあわざるを得なかったかもしれませんが、大人になれば他の世界があるので、嫌いな人とは遠慮せず距離をおきましょう。絶交ではなく、少しずつ距離をとっていけばいいでしょう。
友だちがいなくなるからと、無理につきあいを続けても苦しくなるだけです。一時的には寂しい思いをするかもしれませんが、引き出しにスペースができれば、新しい友だちができる可能性が増します。また、ひとりの時間を充実させることもできます。
たしかに、長いつきあいの友だちは貴重ですが、友だちの価値はつきあいの長さだけではありません。長い間に関係性が変わるのは自然なことですし、絶交したりしなければ、いつかまた近しくなることもありえます。
プライベート以外の人間関係では、そのときどきの役割を演じて社交に努めるため、多少なりともストレスが溜まります。その分、プライベートでは好きな人と楽しく過ごしたいもの。だからこそ、プライベートで無理が必要なおつきあいは避けましょう。
誰にでも何かを嫌う権利があるということは、自分も常に誰かに嫌われる可能性があるということ。でも、大人同士であれば、嫌いな相手に被害を与えることはしません。もし、被害があれば、適切な人に相談して助けてもらうことができます。だから、嫌うことも嫌われることも、怖れることはないのです。
穏やかな日々を送るために、ひとりでは切り替えが難しいときはカウンセラーによるサポートを受けてみませんか。
ご一緒にあなたの問題を考え、整理して、納得のいく解決法を提案いたします。