不安というのは、わけがわからないと増幅します。
つまり、わけがわかれば、不安はおさまります。
しかし、不安をかかえているひとは、不安の中身を知ることをとても恐れます。
なぜなら、不安の中身を知ることは、自分自身に向き合うことだから。
不安を訴えてくるひとに、「何が不安ですか」と聞いても、たいていは「よくわかりません。でもとにかく不安なんです。」と返ってきます。
そこで、ゆっくりと何が不安なのかを探っていくわけですが、どんなに問題の所在を探しても、結局は自分に向かうことになります。
不安というのは、何かを恐れているときに沸き上がる感情です。
自分が何を恐れているのかがわかれば、わけのわからない不安は、わけのわかる不安、つまり対処可能な問題となり、驚くほど気持ちが落ち着きます。
逆説的ですが、怖い怖いと避けていた恐れに向き合ったとき、初めてわけのわからない不安から解消されるのです。
では、どんなふうに不安に向き合えばいいのか。
カウンセリングでは、漠然とした不安を、どんどん具体的な不安に言い換えるようにします。
例えば、将来が不安だと言う場合には、
「将来の何が不安ですか。経済的なこと? 仕事のこと? 家族のこと? 健康のこと???」
「どうなることがいちばん怖いですか」
「どうなったらいいと思いますか」などなど。
不安をかかえているひとは、非現実的な不安をかかえている場合もあります。
そういうときは、それを言葉にしてみて、客観的にみた場合どう思うか、本当に起こりうることかどうかを聞いてみます。
私はよく「それは事実ですか。想像ですか。」と確認しています。
言葉にして、他人事として冷静に考えてみると、案外「それは思い過ごしなのでは」などと思えるものです。実際、最近は「また妄想ぐせがでてますね~」と笑い合うことが多いです。
不安に限らず、漠然とした感情や思考は、あえて「言語化」して客観視すると整理され、その核心に近づくことができます。
言語化すると、無意識が意識化されて、現実の問題として認識されます。
そうすれば、あとは、その解決に向けて努力すればいいだけです。
不安に関していえば、まず、自分が何を本当に恐れているのかを掘り下げていきます。そして、その恐れを少しでも解消するために今何ができるかを具体的に考えていきます。
将来が不安なことを例にとれば、もしその核心が経済的な問題なら、まずは本当にお金が足りなくなるのかどうかを検証し、もし足りないようなら、そのためにどうしたらいいか検討します。今の生活を見直す必要もあるかもしれません。そのうえで、足りない分をどう補うか、貯金、投資、転職、副業など、それぞれについて情報収集し、勉強する必要もでてくるでしょう。
もしパートナーシップの問題なら、自分の望みをはっきりさせて相手に上手に伝えたり、あるいは自分の望む相手をみつけたりする必要があります。
まずは自分の願望・欲求を明らかにするところから、もし上手に伝える方法がわからなければコミュニケーションの勉強を、希望の相手をみつけたいなら、そういう相手にどうすれば出会えるのか考えて行動しなければなりません。
つまり、不安の中身が具体的になれば、必然的にどう動けばいいかが見えてきて、適切な行動をとりやすくなるのです。
根拠のない妄想に悩まされていたときに比べたら、なんと建設的で生産的なエネルギーの使い方なのでしょう。
大事なことは、できるだけ妄想をしないこと。
最悪の事態を考えるのはリスク・マネジメントとして大事なことですが、そこから先の妄想は百害あって一利なしです。
妄想して消耗するエネルギーは、不安の中身を調べて具体化することに使ってください。
そして、もうひとつ大事なのは、コントロールできることとできないことを区別すること。
不安が強い方のなかには、コントロールできないことまでコントロールしようとして、「やっぱり自分には力がない」と不安を募らせてしまっている場合があります。
例えば、他人からの評価。
誰からもよく思われたいと思うことは決して悪くないですが、もしもよく思われないことがあってもそれは仕方のないことだと思えるでしょうか。
なんでも思い通りにしようとしても、世の中のほとんどは思い通りにはなりません。その度ごとに無力感に襲われて不安になっていたら身が持たなくなってしまいます。
他人のことはコントロールできませんが、自分のことならコントロールできます。
だとしたら、コントロールできないことにこだわっている自分の考えをまず手放しましょう。
そして、手元に残ったコントロールできることを、どんどん具体的に落とし込んでいって解決の方法を考え、実行にうつしましょう。
そして最後に。
不安をはじめネガティブな感情は、私たちを危険から守るために必要な感情だということをどうぞお忘れなく。
過剰にあるのはよくないですが、なくなってしまうのもまた困るのです。
ネガティブな感情は私たちが自分を守るために発信するSOSのサインだと思って、その都度適切な行動をとれるようにしましょう。
不安の対処法は、問題の核心から逃げずに、適切な行動をとること。
不安の中身を探るには、紙に書き出すことが効果的です。
もし、ひとりで難しかったら、どうぞカウンセリングにお越しください。
不安を口に出すだけでも、きっと心が少し軽くなると思います。
*「不安と焦りの対処法」は女性のためのハッピーセミナーでも取り扱っています。興味のある方はぜひご参加ください。
穏やかな日々を送るために、ひとりでは切り替えが難しいときはカウンセラーによるサポートを受けてみませんか。ご一緒にあなたの問題を考え、整理して、納得のいく解決法を提案いたします。